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「彼は酒飲みで破天荒なエピソードに事欠かない」
「新人の手柄を横取りする姑息な上司」
「大将、おあいそで!」
このような言葉を見聞きしたことはないでしょうか。
実はここで使われている「破天荒」「姑息」「おあいそ」は、日本語の本来の意味からすると使い方が違っているんです。
そこで今回は、誤用に注意したい日本語を5つピックアップしてご紹介します。
言葉の意味や使い方は時代によって変わるため、相手に伝わればそれで良いのですが、元々の意味を知っておくことに損はありません。
自分が認識している言葉の意味と齟齬がないか、クイズ感覚でチェックしてみてください◎
破天荒
破天荒キャラ、破天荒芸人、破天荒なエピソード・・・といったように、
「破天荒」というワードは注目を集めやすく、メディアや普段の会話でも使いやすい日本語です。
それでは、「破天荒」の本来の意味はAとBどちらでしょうか?
A. 豪快で大胆な様子
B. 誰も成し得なかったことをすること
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答えは、Bの『誰も成し得なかったことをすること』。
破れる、荒いといった漢字のイメージから、
Aの ”豪快で大胆な様子” を連想する方も多いのではないでしょうか。
文化庁が実施した『令和2年度「国語に関する世論調査」』(調査対象:全国16歳以上の個人)によると、『誰も成し得なかったことをすること』という本来の意味を理解していた人の割合は23.3%でした。
言葉の成り立ちをたどると、破天荒は中国の故事に由来します。
もともと「天荒」は未開・未到である状態を意味する言葉。
そこから、誰も成し得なかったことをした状態を「天荒を破った」→「破天荒」と言い表すようになったということです。
「前代未聞」や「前人未到」などとニュアンスが近そうですね。
今の時代であれば、大谷翔平さん、藤井聡太さん、武豊さん、山中伸弥さんといった方々が ”破天荒な人物” の代表と言えるのではないでしょうか。
姑息
続いて「姑息」の本来の意味はAとBどちらでしょうか?
A. 「一時しのぎ」という意味
B. 「ひきょうな」という意味
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答えは、Aの『一時しのぎ』。
大辞林(第三版)には、姑息の意味として次のような記載があります。
こそく 【姑息】(名・形動)
出典:三省堂 大辞林(第三版)
〔「礼記」より。「姑」はしばらく,「息」はやむ意〕
根本的に解決するのではなく,一時の間に合わせにする・こと(さま)。「▼姑息な手段」「因循▼姑息」「無事を喜び▼姑息に安んずるの心/経国美談」〔現代では誤って「卑怯である」という意味に使われることが多い〕
つまり、「取り急ぎ間に合わせの対応で済ませること」、「急場を凌ぐこと」、といった意味合いがあります。
例えば次の例文
- 病院が休みだったので市販の薬で痛みを抑えた。
- 鍋敷きが見つからず新聞紙で代用した。
- 突然の雨漏りにバケツを置いて対処した。
これらも ”姑息な手段” といえます。
ずるい、卑怯といった悪いイメージが先行しがちな「姑息」。
臨機応変に対応するという意味では決して悪い言葉ではないですよね。
ちなみに、文化庁が実施した『令和3年度「国語に関する世論調査」』(調査対象:全国16歳以上の個人)によると、『一時しのぎ』という本来の意味を理解していた人は17.4%でした。
おあいそ
寿司屋や居酒屋などで会計の際に使われている、「おあいそ」。
問題は、”誰が誰に対して使う言葉であるか” です。
A. 客が店員に対して使う言葉
B. 店員が客に対して使う言葉
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答えは、Bの『店員が客に対して使う言葉』。
「おあいそ」を漢字で書くと「お愛想」。
「ニコニコしていて愛想がいい」の「愛想」です。
店員は客に対して「お愛想」よく対応し、客は再びお店に行くようになります。
一方、客がお店(もしくは店員)を嫌になると、お店に行かなくなる。つまり、あきれて見放す「お愛想尽かし」となります。
『「間違いやすい日本語」の本』(著:日本博学倶楽部)によると、この「お愛想尽かし」の「尽かし」が省略されて、やがて「お愛想」が「これっきり」という意味になったのだそう。
そこから、客が会計をする意思をお店側に示すと、店員が「お愛想ですね(これっきりですね)」と応じるようになったということです。
では、冒頭の例文のように、客が寿司屋で
「大将、おあいそで!」と言った場合どうなるでしょうか。
これは、本来の意味で捉えると、
「大将、アンタの握る寿司は嫌になったからもう店には来ないよ!」
と面と向かって言っているようなもの。
時代が時代なら大将ブチ切れです。
ブチ切れは大袈裟かもしれませんが、今でもお店によっては客が店員を真似て使う「おあいそ」を嫌うこともあるようです。
何はともあれ、食事を終えたら
「お会計お願いします」が良さそうですね◎
敷居が高い
「敷居が高い」の本来の意味はAとBどちらでしょうか?
A. 相手に不義理などをしてしまい、行きにくい
B. 高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい
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答えは、Aの『相手に不義理などをしてしまい、行きにくい』。
「敷居」とは門の下や、ふすまなどの下に敷く横木。家に入ることを「敷居をまたぐ」と言ったりしますよね。
三省堂の国語辞典(第八版)にはこのような記載があります。
敷居が高い〔=敷居が高くなった感じがする〕
出典:三省堂 国語辞典(第八版)
①義理を欠いたりして、その人の家に行きにくい。「ごぶさたしたのでー」
②近寄りにくい。「庶民にとってお役所はー」
③気軽に体験できない。「オペラはーと思いがちだ」
▷ ①は江戸時代から、②は戦前から、③は一九八〇年代にはもうあった用法。
つまり今回の問題は、Bも意味としては間違いではありませんが、”本来の意味” ということではAが答えになります。
「敷居が高い」と「ハードルが高い」の違い
似たような言葉に「ハードルが高い」があります。
ではこれらの違いは何でしょうか。
それは ”心理的な抵抗が大きいかどうか” 。
三省堂の国語辞典に〔敷居が高くなった感じがする〕と記載があるように、「敷居が高い」は、物理的に高いわけではなく、高く”感じる”ということ。
つまり、心理的な抵抗が大きい場合に「敷居が高い」を使います。
一方の「ハードルが高い」は、心理的な抵抗は無くても、目的達成や課題解決が難しい場合に使います。
- 初心者でフルマラソン完走はハードルが高い(心理的 < 体力や経験)
- 司法試験合格のハードルは高い(心理的 < 難易度)
といった使い方です。
ただ、
- 一人焼肉はハードルが高い
といった具合に、心理的な抵抗を表す場合に使われることもありますよね。
他の言葉同様、用法は日々変化しているので、明確な使い分けが無くなっているのが現状です。
さわり
「話のさわりだけも教えてよ」、「曲のさわりってどんなだっけ?」
などと使われている「さわり」という言葉。
では、もし「曲のさわりを歌って」と言われたとき、本来の言葉の意味では、AとBどちらを歌うのが正しいでしょうか?
A. 歌い出し(最初)の部分
B. 一番盛り上がるサビの部分
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答えは、Bの『一番盛り上がるサビの部分』。
三省堂の国語辞典や大辞林によると、もともと「さわり」は浄瑠璃用語。
浄瑠璃の主人公の気持ちを述べる、節のはなやかな聞かせどころ『さわり文句』が由来なのだそう。
転じて、演説・劇・映画・楽曲などの全体のなかで、一番の聞かせどころ・見どころの部分を指すようになったそうです。
なお、三省堂の国語辞典(第八版)には【俗語】として "最初の部分" を表す意味も追記してあります。
状況や文脈に応じて使い分けるのが良さそうですね。
例えば、
「その映画見にいこうか迷ってて。さわりだけ教えてよ」
と友達に言われたら、ストーリーのはじめの部分だけを話せば良いでしょう。
本来の意味に固執するあまり、いきなりオチやクライマックスシーンを話したらとんでもないことになります。
おしまい
ブログを書くようになって、言葉の使い方や日本語の意味を、さらに意識するようになりました。
本や辞書などで調べ始めると、意外な意味の数々に「へぇ〜」、「ほー」の連続です。
辞書によって個性があるのも楽しい。
これ紹介したいなぁ、と思った言葉や漢字はまだまだあるので、またの機会に共有できればと思います。
そんなことを言いながら、私も言葉の使い方が間違っていることはよくあります・・
この書き方違うよ!なんてことがありましたら遠慮なくご指摘ください。
学びは尽きないぃぃ
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