出雲弁講座の第4回!
今回も出雲弁の様々な言い回しや特徴的な表現をご紹介していきます!
例文や用例には、これまでの出雲弁講座で扱った用語も多く含まれています。
既出の用語については解説を割愛しているので、わからない箇所については前回までの記事を参照してみてくださいね◎
▼前回までの記事
今回の例文を解説無しにわかるようになれば、出雲弁の基本がかなり身についていると言えるでしょう!
それでは、理解度チェックも兼ねて例文をどうぞ~
【今回の例文】電話で会話する親子。
では例文から。カッコ内()の太字は標準語訳です!
Aさん:今スーパーに向かっちょーとこだけど、何かいーもんある?(今スーパーに向かっているところだけど、何か要るものある?)
Bさん:特にないけど、今夜ってご飯何(なん)かいねぇ?(特にないけど、今夜ってご飯何だっけ?)
Aさん:まだ決めちょらんよ。(まだ決めていないよ)
Bさん:えー、じゃあ鍋がいいわー。最近寒てあばかんけん。(えー、じゃあ鍋がいいなー。最近寒くて堪らないから)
Aさん:そげだねぇ。じゃあ鍋にすーか。何鍋がいかいなぁ・・(そうだね。じゃあ鍋にしようか。何鍋が良いかな・・)
キムチ鍋は辛(から)ていけんって言っちょったよねぇ?(キムチ鍋は辛くてダメだって言ってたよね?)
Bさん:そげだに。あんまり辛いもん食べーと腹が痛んなっていけんに。(そうなのよ。あんまり辛いもの食べると腹が痛くなってだめなのよ)
あ、モツ鍋とかどげだらか?(あ、モツ鍋とかどうだろうか?)
Aさん:いがね、そうすーか。(良いじゃない、そうしようか)
モツはどーほどいーだ?(モツはどれほど必要かな?)
Bさん:1kgくらい??
Aさん:ま!よもよも、しぇたもんだわ! しゃんにいらんでしょ!?(よくもまあ、とんでもないことだよ!そんなに要らないでしょ!?)
500gあればいでしょ。(500gあればいいでしょ)
Bさん:了解〜!じゃあそーでお願い。(了解〜!じゃあそれでお願い)
ぬらとぬんぬくも買ってきてねー。(ニラとにんにくも買ってきてねー)
以上が今回の例文です。次に例文で出てきた出雲弁を一つひとつ解説します!
〇〇ちょー(=〇〇じょー) / 〇〇ちょる(=〇〇じょる) / 〇〇とる(=〇〇どる)
「〇〇している」の意味。
〇〇には動詞が入り、現在の動作や様子、状況を表す際に使います。
これぞ出雲弁!という定番の言い回しで、かなり頻繁に使われます。
前にくる言葉によって、【〇〇じょー】【〇〇どる】などと音が濁ることもあります。
また、【ちょー】【ちょる】【とる】はどれも同じ意味で、何を使うかはその人の好みや口癖によります。
《用例》:
Aさん:今何しちょー?(今何しているの?)
Bさん:吉野家でご飯食べちょるとこ。(吉野家でご飯食べてるとこ)
昼だけん、だいぶ混んどるわ。(昼だからだいぶ混んでるよ)
上記の用例は次のように言い換えることもできます。
《用例》:
Aさん:今何しちょる?(今何しているの?)
Bさん:吉野家でご飯食べとるとこ。(吉野家でご飯食べてるとこ)
昼だけん、だいぶ混んじょーわ。(昼だからだいぶ混んでるよ)
〇〇もん
「〇〇な物」の意味。
出雲弁講座 vol.1の例文【そぎゃんもん(そぎゃん+もん)】(そんなもの)のように、別の言葉と組み合わせて使います。
今回の例文にある【いーもん】とは、【いー(要る)】と【もん】が組み合わさった言葉で、「要るもの」を意味します。
【いー】といった、音を伸ばす表現については出雲弁講座 vol.1の【「る」の省略について】を参照ください。
《用例》:食べーもんある?(食べる物ある?)
《用例》:見たいもんがない(見たいものがない)
《用例》:何か拭くもんあーかいねぇ?(何か拭く物あるかなぁ?)
〇〇ちょらん(=〇〇じょらん) / 〇〇とらん(=〇〇どらん)
「〇〇していない」の意味。
先の【〇〇ちょー】【〇〇ちょる】【〇〇とる】の否定表現になります。
〇〇には動詞が入り、前にくる言葉によっては【〇〇じょらん】【〇〇どらん】といった具合に音が濁ることもあります。
《用例》:私まだ見ちょらんけん、ネタバレ禁止ね。(私まだ見てないから、ネタバレ禁止ね)
《用例》:今日は郵便届いとらんわ。(今日は郵便届いていないよ)
《用例》:平日だけん今日は混んじょらんね。(平日だから今日は混んでないね)
寒て / 「く」の省略について
寒て
「寒くて」の意味。詳しくは次の項目で。
「く」の省略について
「寒くて」→【寒て】のように、出雲弁では理由を表す「くて」の「く」を省略して使われます。
意味は変わらず、「~くて」「~だから」となります。
《用例》:ジェットコースターは怖ていけんわ。(ジェットコースターは怖くてダメだよ)
《用例》:値段の割に少なて買うのやめた。(値段の割に少ないから買うのやめた)
あばかん
「堪らない(たまらない)」を意味する出雲弁。
標準語の「堪らない」と同様、状況によって使い分けがあるのでご紹介します。
使い方1:我慢できないとき
ある状況や対象に対して、「我慢できない」、「やりきれない」、「耐えられない」、「甚だしい(はなはだしい)」、「手に負えない」、「敵わない」といったときに使います。
《用例》:腹が減ってあばかん。(腹が減って我慢できない)
使い方2:褒めたり賞賛するとき
「この上なくいい」、「何とも言えないほど良い」という意味で、褒めたり賞賛するときに使います。「堪らなく良い!」と言った感じです。
《用例》:赤ちゃんが可愛(かわい)てあばかんかったわ!(赤ちゃんが可愛くて堪らなかったよ!)
使い方3:程度がはなはだしいとき
程度がはなはだしいとき、「たくさん」の意味で使用します。
出雲弁講座 vol.2で紹介した【ふつごな / ふつごに】と同じような意味合いで使います。
《用例》:潮干狩り行ったらアサリがあばかんほど取れたわ。(潮干狩り行ったらアサリがすごくたくさん取れたよ)
そげ / そげ〇〇
「そう」(はい:YES)の意味。
出雲弁講座 vol.2で紹介した【いんや(えんや)】の反対語とも言えます。
使い方1:【そげ】単体で使うとき
【そげ】単体で使う場合はフランクな相槌になり、「そうだね」「うん」に近い意味合いになります。
《用例》:
Aさん:住所ってこれで合っちょるよね?(住所ってこれで合ってるよね?)
Bさん:そげそげ。(そうそう)
使い方2:そげ+〇〇
別の言葉と組み合わせることで、相槌のニュアンスを変えることができます。
《用例》:
【そげだよ】→ そうだよ
【そげです】→ そうです
【そげですね】→ そうですね
【そげでしたね】→ そうでしたね
相槌以外にも次のような言い方があります。
《用例》:
【そげだった】→ そうだった
【そげすると】→ そうすると
【そげじゃない】→ そうじゃない
【そげだったっけ?】→ そうだったっけ?
なお、出雲弁講座 vol.1で紹介した【そぎゃん(=そげな、そげに)】で使われている【そげ】(そのような)とは意味合いが違うのでご注意を。
い(え) / えー
「良い」の意味。
出雲弁では「良い」を短く一語で【い】とか【え】、もしくは【えー】と言ったりします。
【い】、【え】どちらを使うかは、その人の好みや口癖によります。
例えば、今回の例文にある【何鍋がいかいなぁ】(何鍋が良いかなぁ)は【何鍋がえかいなぁ】と言う人もいます。
《用例》:
Aさん:これでいが?(これで良いよね?)
Bさん:こーでえーわ!(これで良いよ!)
〇〇ちょった / 〇〇とった
「〇〇していた」「〇〇したことがあった」の意味。
先の【〇〇ちょー】【〇〇ちょる】【〇〇とる】の過去完了表現になります。
《用例》:部活は小学校から高校までサッカーやっちょったわ。(部活は小学校から高校までサッカーやっていたよ)
《用例》:
Aさん:昨日は何しちょったの?(昨日は何していたの?)
Bさん:休みだったけん、玉造温泉行っとったわ。(休みだったから、玉造温泉行っていたよ)
(語尾につける)~だに / ~に
(語尾につける)〜だに
「〜だよ」「〜なんだよ」「〜なのよ」の意味。会話の語尾につけて使います。
この【だに】は、島根県以外でも静岡県や愛知県などでも使われているようですね。
先の【そげ】と組み合わせた【そげだに】(そうなんだよ)も、よく使う言い回しです。
《用例》:そげだに。実は今日誕生日だに。(そうなんだよ。実は今日誕生日なのよ)
(語尾につける)~に
「〜だよ」「〜なんだよ」「〜なのよ」の意味。
【〜だに】と同じ意味で、会話の語尾につけて使います。
ただ、どちらを使っても良いというわけではなく、前にくる言葉に応じて「〜だに」と「〜に」を使い分けています。
【〜だに】と【〜に】の使い分けについては説明が難しいのですが、動詞の後は【〜に】を使用する傾向にあります。例えば、他県では「行くだに」と言っているところを、島根では【行くに】(行くよ)と言います。
実際に会話で使い分けるには、経験や慣れが必要かもしれませんね。
《用例》:今日会社でプレゼント貰ったに。(今日会社でプレゼント貰ったんだよ)
《用例》:無くしたと思っちょったら、ソファーの下にあったに!(無くしたと思っていたら、ソファーの下にあったのよ!)
痛んなって / 「く」の変換について
痛んなって
「痛くなって」を言い換えた出雲弁。詳しくは次の項目で。
「く」の変換について
「痛くなって」→ 【痛んなって】のように、出雲弁では主に「〇〇になる」のような意味合いで使われる形容詞について、送り仮名で使われる「く」を、「ん」に変換して使われます。
例えば、「悪くなって」を出雲弁にすると【悪んなって】になります。
その他、例を挙げるとこのような言い回しになります。
《用例》:
だいぶ寒くなった →【だいぶ寒んなった】
結構良くなった →【結構良んなった】
暖房が効いて暑くなった →【暖房が効いて暑んなった】
外が暗くなってきた →【外が暗んなってきた】
地元の人が頻繁に用いる表現ですが、出雲弁に慣れていないと自ら使うのはやや難しいかと思います。聞いたときに何となくわかれば十分です◎
どげだらか? / 〇〇だらか?
どげだらか?
「どうだろうか?」の意味。
出雲弁講座 vol.2で紹介した【どげ】と、次の項目で解説する【だらか?】を組み合わせた出雲弁。
〇〇だらか?
〇〇の言葉を受けて
「〇〇だろうか?」「〇〇かな?」の意味として使われます。
《用例》:
【食べーだらか?】→ 食べるだろうか?
【要らんだらか?】→ 要らないかな?
【いけんだらか?】→ 良くないだろうか?
【そげだらか?】→ そうだろうか?
〇〇だ?
「〇〇かな?」「〇〇なの?」の意味。
例文にある【いーだ?】は【いー】(要る)と【〇〇だ?】が組み合わさった言葉で、「要るかな?」「必要かな?」という意味になります。
《用例》:明日は仕事だ?(明日は仕事なの?)
《用例》:1ヶ月のガソリン代ってなんぼだ?(1ヶ月のガソリン代っていくらするの?)
よもよも
「よくもまあ」「なんとまあ」の意味。
ある状況に対して驚きや、感心、信じられないときなど、リアクションの言葉として使います。英語の「Wow!」に近いニュアンスです。
驚きが大きい時は【よもよも】の前に「ま!」「まぁ」をつけることもよくあります。
《用例》:よもよも!ふつごな量のチャーハンだね!(よくもまあ!すごい量のチャーハンだね)
《用例》:ま!よもよも、あぎゃん小さい体で横綱倒したわ!(なんとまあ~、あんな小さい体で横綱倒したよ!)
しぇたもん(せたもん)
「とんでもないこと」「とんでもない人」の意味。
例文のように【よもよも】と組み合わせて、【よもよも、しぇたもんだわ!】(よくもまあ、とんでもないことだ!)と使われることも多い出雲弁です。
また、人によっては【しぇたもん】を【せたもん】と言う人もいます◎
《用例》:まぁ〜、しぇたもんだわ!わんこそば500杯も食べたかね!?(まぁ〜、とんでもないことだ!わんこそば500杯も食べたの!?)
《用例》:貸金庫から金塊盗んだ!?しぇたもんだな!(貸金庫から金塊盗んだ!?とんでもない奴だな!)
しゃん(=そぎゃん) / きゃん(=こぎゃん)
しゃん(=そぎゃん)
出雲弁講座 vol.1で紹介した【そぎゃん】と同じで、「そんな」「そんなに」といった意味になります。
《用例》:今はしゃん場合じゃない。(今はそんな場合じゃない)
《用例》:しゃんことないでしょ。(そんなことないでしょ)
きゃん(=こぎゃん)
出雲弁講座 vol.1で紹介した【ごぎゃん】と同じで、「こんな」「こんなに」といった意味になります。
《用例》:きゃんことしても意味ないよ。(こんなことしても意味ないよ)
《用例》:きゃんに豪華な部屋初めて泊まったわ。(こんなに豪華な部屋初めて泊まったよ)
おしまい:腰が痛てあばかん!
今回は以上です!
ところでみなさんは腰痛ってなったことありますか?
私は座って作業することが多いのですが、最近になって初めて腰痛になりました。
きっかけは洗濯物を畳んでいるときだったのですが、何気ない動作で、急に。
まさか、これが腰痛?いやぎっくり腰??
ぎっくり腰だったらやばい・・・と思ったのですが、結局腰痛だったようです。
【腰が痛てあばかん!】(腰が痛くてたまらない!)というほど酷くはないですが、多少の痛みを感じています。
前にNHKか何かでやっていた腰痛に効くストレッチを気休め程度にしていますが、効いているのかどうなのか。。
運動不足で筋肉が落ちてきた感じもするので、こまめに休憩を取ってストレッチをしたり、意識的に体を動かしていこうと思います。
みなさんも腰痛にならないよう、適度に運動をするなどして気をつけてくださいね〜
では、ずかいの出雲弁講座でー!