出雲弁講座の第2回!
「だんだん」の次は『すす』です。
すす?? 出雲弁(主に島根県東部〜出雲地方の方言)の訛りですが、何のことかわかるでしょうか?
記事のサムネイルで激しくネタバレしてますが、詳しくはこのあとの例文と解説をご覧ください!
今回もはじめに例文を。次に例文で使われている出雲弁について解説します。
解説ではさまざまな用例もご紹介しているので、ぜひご参考になさってください。
なお、例文や用例では、前回の記事で解説した出雲弁も多数使われています。
もしわからない言葉があれば、ぜひチェックしてみてくださいね◎
→前回の記事はこちら(【例文で覚える】出雲弁講座 vol.1)
【今回の例文】手土産をもって友達の家を訪れたときの会話。
では例文から。カッコ内()の太字は標準語訳です!
Aさん:ご飯まだだが? まさげなすす買ってきたけん食べらや!(ご飯まだだよね? 美味しそうな寿司買ってきたから食べようよ!)
Bさん:うわぁー、だんだん! どぎゃん寿司かいね?(うわー、ありがとう! どんな寿司だろう?)
Aさん:こーだわ〜。(これだよ〜)
Bさん:えー! ! ネタがふつごに大きいがん!(えー!! ネタが凄く大きいねぇ!)
か、えらいごっつぉだわ~!ごぼずがでーやなわぁ~。(これは、すごいご馳走だね~!よだれが出てしまいそうだよ)
Aさん:だがぁ~!はやこと食べらで!(だよね〜!早く食べようよ!)
Bさん:あ、その前に寿司なんぼだった? お金はらーわ!(あ、その前に寿司はいくらした? お金払うよ!)
Aさん:いんや、要らんけんね。きんにょ相談に乗ってごいたお礼だわね~。(いいえ、要らないから。昨日相談に乗ってくれたお礼だよ~)
Bさん:あーけい!そげゃんこと言わずに! で、なんぼかいね??(あーもう!そんなこと言わずに! で、いくらなの??)
Aさん:いや、ほんにいいけん!(いや、本当にいいから!)
Bさん:いけんわね〜!(ダメだよ〜!)
Aさん:そぎゃんきこなこと言わんでも! まぁ食べらや!(そんな頑固なこと言わなくても! まぁ食べようよ!)
以上が今回の例文です。次に例文で出てきた出雲弁を一つひとつ解説します!
(疑問形の)~だが? / ~が?
「〇〇だよね?」「〇〇でしょ?」の意味。相手に同意・賛同を求めたり、念の為確認するときに使う出雲弁です。
《用例》:今日の打ち合わせって14時からだが?(今日の打ち合わせって14時からだよね?)
《用例》:お父さん、もうお風呂入ったが?(お父さん、もうお風呂入ったでしょ?)
~げ / ~さげ / まさげ
~げ / ~さげ
「〇〇そうな」「〇〇みたいな」「〇〇のような」の意味で、様子や状態を表す出雲弁です。
《用例》:これは難しげな問題だね。(これは難しそうな問題だね)
《用例》:そぎゃん寒さげな格好で外出たら風邪ひくよ!(そんな寒そうな格好で外出たら風邪引くよ!)
まさげ
「美味しそう」の意味。【まさげ】は「美味(うま)さげ」が短くなった言い方。
《用例》:盛り付けも綺麗でまさげだねぇ!(盛り付けも綺麗で美味しそうだねぇ!)
すす
「寿司」の訛った言い方。
出雲弁の訛り(発音)ですが、年配の方や訛りが結構ある方だと
「さしすせそ」の「し」は『す』になりがちで、
「ざじずぜぞ」の「じ」は『ず』になりがちです。
例えば
「刺身」の発音は「さすむ」
「時間」の発音は「ずかん」
といった具合になります。
今回はさ行について取り上げましたが、実は他の五十音でも同じようなことが言えます。
出雲弁の発音については少し長くなりそうなので、次回ご紹介しますね◎
➡︎【追記】出雲弁講座の第3回【発音(訛り)編】を公開しました! 記事はこちら
~や(=~で) / ~らや(=~らで)
「〇〇しよう」「〇〇しようよ」「〇〇しようか」の意味で、相手の行動を促すときに使う出雲弁です。
直前の動詞によって語尾が【〜や】→【〜らや】、【〜で】→【〜らで】などに変わります。
《用例》:お母さんも一緒に観に行かや。(お母さんも一緒に観に行こうよ)
《用例》:閉店近いし、そろそろ帰らで。(閉店近いし、そろそろ帰ろうか)
どげ / どぎゃん(=どげな)
これもかなりの頻度で使う出雲弁です。
どげ
「どう」の意味。
《用例》:そぎゃん暗い顔してどげした?(そんな暗い顔してどうした?)
どぎゃん(=どげな)
「どんな」「どのような」の意味。
前回の記事でご紹介した、【ごぎゃん(=こげな、こげに)】、【そぎゃん(=そげな、そげに)】【あぎゃん(=あげな、あげに)】と同じようなイメージです。
ただ、【どげに】といった言い方はあまりしません。
《用例》:最近の大谷はどぎゃん調子?(最近の大谷はどんな調子?)
《用例》:仕事の進捗はどげな感じですか?(仕事の進捗はどのような感じですか?)
こー / そー / あー / どー
「これ・それ・あれ・どれ」に対応する出雲弁。
いわゆる『こそあど言葉』にあたる指示語として使われます。
【こー】→「これ」の意味
【そー】→「それ」の意味
【あー】→「あれ」の意味
【どー】→「どれ」の意味
《用例》:こーが僕の免許証だわ。(これが僕の免許証だよ)
《用例》:そーはまだ下味つけてないわ。(それはまだ下味つけてないよ)
《用例》:あーがいいじゃないの?(あれがいいんじゃないの?)
《用例》:色々あーけど、どーにする?(色々あるけど、どれにする?)
ふつごな / ふつごに
「すごく」「たくさん」「大変に」「大変な数(量)」といった意味で、量や程度、規模が大きいことを言い表すときに使います。
《用例》:今年はふつごな数の年賀状が届いたわ。(今年はすごい数の年賀状が届いたよ)
《用例》:外出た途端、ふつごに雨が降ってきたわ!(外出た途端、すごい量の雨が降ってきたよ!)
~がん / ~がね /~だがん
「〇〇だね」「〇〇だよね」「〇〇じゃない」といった意味合いで使われる出雲弁。会話の中でかなり頻繁に使われます。
関西弁の「〇〇やん」、静岡や神奈川などの方言で知られる「〇〇じゃん」などと同じような意味合いになります。
《用例》:いいがね、ちょっとぐらい見せてよー!(いいじゃない、ちょっとぐらい見せてよー!)
《用例》:へぇ~、いい写真だがーん!(へぇ~、いい写真だねぇ!)
か
「これ」「これは」の意味。目の前のものを指すときに使う出雲弁です。
前述した出雲弁【こー】と同じ意味になります。
【こー】のように音を伸ばさず、短く「か」と言います。
《用例》:か何?(これ何?)
えらい
出雲弁の【えらい】には大きく2つの意味があります。
(程度を表す)えらい
「すごく」「すごい」「とても」といった意味で、前述した出雲弁【ふつごな】【ふつごに】と同じ意味になります。
《用例》:えらい沢山買って来たね。(すごく沢山買ってきたね)
(大変さ・しんどさを表す)えらい
「大変」「辛い」「疲れた」「しんどい」「難儀」といった意味で使います。
《用例》:今日は大雪でえらかったでしょ?(今日は大雪で大変だったでしょ?)
《用例》:高熱でえらいわ~。。(高熱でしんどいわ~。。)
ごっつぉ
「ご馳走」の意味。
美味しそうな料理、贅沢な料理を指し、いわゆる「ごちそう」を表す際に使う出雲弁です。
調べてみると香川の讃岐弁であったり、山形の庄内弁なども同じ意味で【ごっつぉ】を使うようです。
また、食事を終えた際の「ごちそうさま」「ごちそうさまでした」を、【ごっつぉさん】【ごっつぉさんでした】と言ったりもします。
《用例》:妻の料理は何でもごっつぉだわ~。(妻の料理は何でもご馳走だよ~)
ごぼず
「よだれ(涎)」の意味。
ただし、よだれをすべて【ごぼず】と言うわけではありません。地元の人もよだれは、よだれと言うことがほとんど。赤ちゃんの「よだれ掛け」を【ごぼずかけ】ということはありません。
【ごぼず】を使うときのほとんどは、美味しそうな料理を目の前にしたとき。
「よだれが出るほどの美味しそう」と言うときの、比喩としてのよだれを【ごぼず】と言います。
やな
「〇〇のような」「(ある状況・状態に)なりそうな」「〇〇しそう」の意味。
何かに例えたり、近い将来の起こりそうなことを言い表すときに使います。
《用例》:そのドレス、結婚式に行くやな格好だね。(そのドレス、結婚式に行くような格好だね)
《用例》:雲が出てきて雨がふーやな感じだね。(雲が出て来て雨が降りそうな感じだね)
(肯定表現の)~がぁ / (相槌として使う)だがぁ
前述の(疑問形として使う)【~だが?】【~が?】とは異なる、肯定表現や相槌で使う【がぁ】【だがぁ】について解説します。
(肯定表現の)~がぁ
「〇〇だよねぇ」の意味。
相手に賛同や共感を求めたりするとき使う出雲弁です。
《用例》:これ安いけど丈夫で良いがぁ!(これ安いけど丈夫で良いよねぇ!)
(相槌として使う)だがぁ
相槌として【だがぁ】と言う場合は、「だねぇ」「だよね〜」と言った意味になり、相手の意見に同調・賛同する意味合いになります。【そうだがぁ】と言えば「そうだよねぇ」という意味になります。
《用例》:
Aさん:うちらって男運無いがぁ。(うちらって男運無いよねぇ)
Bさん:だがぁ。どげしたらいいんだろ。。(だよねぇ。どうしたらいいんだろ。。)
はやこと
「早く」の意味。
相手を急かしたり、早い行動を促す際によく使う出雲弁です。
《用例》:そろそろ店が閉まるけん、はやこと行かや!(そろそろ店が閉まるから、早く行こうよ!)
はらー / 「う」の省略について
はらー
「払う」の意味。詳しくは次の項目で。
「う」の省略について
前回の記事でご紹介した「る」の省略と同様に、出雲弁は動詞(買う、思う、会う)の「う」を省略することが多いのも特徴です。
なお、省略する際は、直前の音を伸ばします。
例えば、例文にある「払う」→【はらー】になります。
その他にも、次のような言い回しをよくします。
《用例》:私がかーけん(私が買うよ) / おもーのは自由だわね(思うのは自由でしょ) / 僕がもらーわ(僕が貰うよ) / 明日あー予定だよ(明日会う予定だよ)
いんや(えんや)
「いいえ」「違う」の意味。
否定する時の応答表現になります。
前回ご紹介した【だけん】と組み合わて【いんやだけん】と言うと、「違うから」「違うんだよ」という意味になり、比較的強めに否定する表現になります。
なお、発音ですが、【いんや】とはっきり言う人もいれば、「イ」と「エ」の中間のような音で【えんや】と言う人もいます。
《用例》:
Aさん:旦那さんしっかりしてるし、家事とかもしてくれるんでしょ。
Bさん:いんやだけん。家ではグータラで何もしてごさんよ。(違うから。家ではグータラで何にもしてくれないよ)
きんにょ
「昨日」の意味。
《用例》:きんにょはだんだん。助かったわ。(昨日はありがとう。助かったよ)
けい!
「もう!」の意味。
憤りの感情や非難・叱責などの気持ちを込めて言うときの「もう!」です。
【け〜い!】と言う時は「も〜う!」と言う意味合いになります。
《用例》:けい!服伸びるけん引っ張らんで!(もう!服伸びるから引っ張らないで!)
《用例》:け~い!邪魔だけんそこどいて!(も~う!邪魔だからそこどいて!)
ほんに
「本当に」の意味。
かなりの頻度で使われる出雲弁です。
《用例》:きんにょのライブはほんに良かったわ!(昨日のライブは本当に良かったよ!)
いけん
「ダメ」の意味。
これもかなり使う出雲弁です。
関西弁の「いかん」「あかん」と同じような意味合いになります。
《用例》:病み上がりだし無理したらいけんよ。(病み上がりだし無理したらダメだよ)
《用例》:いけんいけん、そこは立ち入り禁止だよ。(ダメダメ、そこは立ち入り禁止だよ)
きこ(きこな)
「頑固」「強情」「意地っ張り」の意味。
《用例》:あいつはきこなけん、何言っても無駄だわ。(あいつは頑固だから、何言っても無駄だよ)
おしまい:出雲弁の丁寧語って?
本講座の例文や用例のほとんどは、友達同士などの親しい間柄で交わされるフランクな言い回しになります。
では、目上の人などに対する丁寧で失礼にならない言い回しはどうなるでしょうか?
答えは意外と単純で、「です・ます」調と組み合わせる(付け足す)ことで言い表すことができます。
例えば、今回の例文で扱った
【ご飯まだだが?】(ご飯まだだよね? )
を丁寧な表現に言い換えると
【ご飯まだですが?】(ご飯まだですよね?)
【どぎゃん寿司かいね?】(どんな寿司なの?)
を丁寧な表現に言い換えると
【どぎゃん寿司ですかいね?】(どんな寿司でしょうか?)
【お金はらーわ!】(お金払うよ!)
を丁寧な表現に言い換えると
【お金はらーますわ!】(お金払いますよ!)
と言った具合になります。
他にも違った言い方はできますが、基本はこのように「です・ます」調と組み合わせればOKです◎
では、今回はここまで。
次回の出雲弁講座では発音(訛り)についてご紹介します!お楽しみに~
➡︎【追記】出雲弁講座の第3回【発音(訛り)編】を公開しました! 記事はこちら