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2024.09.30
2024.11.30

【例文で覚える】出雲弁講座 vol.1

出雲弁講座
テープ

先日、SNSでこんな投稿を目にしました。

「だんだん」って何?


大相撲(2024年)秋場所・千秋楽で定年を迎えた第38代・木村庄之助さん(出雲市出身)の最後の立行司。その相撲中継で、「だんだん」と書かれたメッセージボードを掲げる観客が何名も映っていました。SNSの投稿は、そんな様子を見た人のものだったようです。


だんだん、というのは出雲弁(主に島根県東部〜出雲地方の方言)で「ありがとう」を意味します。50年の行司人生に幕を下ろした木村庄之助さんへの、地元の方や相撲ファンからのメッセージでした。


以前NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「だんだん」が放送されていましたが、今から16年も前のこと。「だんだん」の意味を知らない人がいても当然です。

あと朝ドラ繋がりですが、2025年後期の朝ドラ「ばけばけ」は島根県が舞台。おそらく劇中では「だんだん」よりもさらにマイナーな出雲弁が聞けることでしょう。


そこで今回は、我々地元民がよく使う出雲弁をご紹介します!

はじめに例文を。次に、例文で使われている出雲弁について解説します。

なんとなくでも理解できれば、島根観光や朝ドラ「ばけばけ」をもっと楽しめると思うのでぜひご覧ください◎

Contents
  1. 【今回の例文】夜。外でご近所同士の会話。
  2. ばんじまして / ばんげ
  3. こぎゃん(=こげな、こげに) / そぎゃん(=そげな、そげに) / あぎゃん(=あげな、あげに)
  4. (疑問形の)~かね?(=〜かいね?) / (肯定表現の)~かね
  5. ~けん / ~だけん
  6. ~わ / ~わね / ~だわ / ~だわね
  7. あだん
  8. 買わん(〇〇ん) / 〜らん / (否定表現の)せん
  9. あー  / 「る」の省略について
  10. ちょんぼ(=ちょんぼし)
  11. ごす / ごした(=ごいた) / ごす? / ごさん?
  12. なんぼ
  13. えすこに / えすこ
  14. おしまい:抑揚は標準語と変わらない(?)

【今回の例文】夜。外でご近所同士の会話。

まずは例文から。カッコ内()の太字は標準語訳です!


Aさん:ばんじまして〜。(こんばんわー)

Bさん:あら、ばんじまして〜。こぎゃんばんげにどこ行くかねぇ?(あら、こんばんわー。こんな夜遅くに、どこに行くの?)

Aさん:ネギが無んなったけん買い行くとこだわ。(ネギが無くなったから買いに行くところだよ)

Bさん:あだん! そぎゃんもん買わんでもうちの畑になんぼでもあーけんあげーわね。(も〜!そんなもの買わなくても私の畑にネギがいくらでもあるから、あげるよー)

Aさん:あらぁ、だんだ〜ん。じゃあちょんぼしごす?(あら、ありがと〜。じゃあ少しだけ貰ってもいい?)

Bさん:あぁ、なんぼでも!畑にあーけん、えすこにするだわ〜。(あぁ、いくらでも!畑にネギがあるから、自由に取っていいよ〜)

Aさん:だんだん!そぎゃんに要らんけん。ちょんぼし貰うわ~。(ありがとう!そんなには要らないから。少しだけ貰うね~)



以上が今回の例文です。次に例文で出てきた出雲弁を一つひとつ解説します!



ばんじまして / ばんげ

ばんじまして

「こんばんわ」の意味。「ばん」=「晩」を意味するので覚えやすいかと思います。リアルな発音は「バンズマステェ(ばんじまして)」。


朝と昼のあいさつは「おはようございます」、「こんにちは」とそのままですが、夜のあいさつだけは、【ばんじまして】を使うことがあります。若い人から聞くことは少なく、年配の人が使っているイメージです。


ばんげ

【ばんげ】はよく使われる出雲弁で、「日が暮れた頃、夜頃、夜間」といった意味になります。

次の項目で説明する【こぎゃん】と組み合わせて、【こぎゃんばんげ】と言うことで「このような夜の時間帯に」といった意味になります。



こぎゃん(=こげな、こげに) / そぎゃん(=そげな、そげに) / あぎゃん(=あげな、あげに)

様子や状況を指す出雲弁。会話でめちゃくちゃ使います。

用例に記載した()の太字は標準語訳です。(以下同様)

こぎゃん(=こげな、こげに)

「こんな」「このような」「こんなに」の意味。今の状況、または目の前の様子を指す出雲弁です。「like this」に近いニュアンス。

《用例》:ごげに沢山!?(こんなに沢山!?)


そぎゃん(=そげな、そげに)

「そんな」「そのような」「そんなに」の意味。今の状況、または目の前の様子を指す出雲弁です。「like that」に近いニュアンス。

《用例》:そげな格好でどこ行くかね?(そんな格好でどこ行くの?)


あぎゃん(=あげな、あげに)

「あんな」「あのような」「あんなに」の意味。過去の状況、または遠くにある物の様子を指す出雲弁です。「such」に近いニュアンス。

《用例》:あげなこと言わんでもいいに。(あんなこと言わなくてもいいのに)



(疑問形の)~かね?(=〜かいね?) / (肯定表現の)~かね

これもよく使う言い回しで、【かね】を疑問形として使うとき、肯定表現で使うときで意味が変わります。

(疑問形の)~かね?(=〜かいね?)

疑問形として使うときは、「〇〇かな?」「〇〇だっけ?」「〇〇だろうか?」と言った意味合いになり、様子や状態、可否などをフランクにたずねる表現になります。

なお、【〜かね?】も【〜かいね?】も同じなのでどちらを使っても結構です。

《用例》:これ食べるかね?(これ食べる?)

《用例》:明日は祝日かいね?(明日は祝日だっけ?)


また、【どげかね?(どげかいね?)】(調子はどう?、どんな様子?)として使われることが多く、「What's up?」に近いニュアンスになります。【どげ】とは「どう」「どのような」という意味で、相手の様子を伺うときに使います。

《用例》:最近どげかね?(最近はどんな調子?)


(肯定表現の)~かね

「(へぇ)〇〇なんだ」といった意味で使う出雲弁です。

《用例》:こないだ入学したと思ったら、もう卒業かね。(こないだ入学したと思ったら、もう卒業するんだね)


また相手の話を受け、相槌として【そげかね】(なるほど、そうなんだ)として使われることが多く、「I see.」に近いニュアンスになります。【そげ】とは「そう」「そうだよ」という意味です。

《用例》:そげかね。大変だったね。(そうなんだ。大変だったね)



~けん / ~だけん

出雲弁といえばこれ!と言うほど、最も使う言葉。ある事柄の語尾につけて使います。

使い方は大きく2つあります。

使い方1:理由や原因を伝えるとき

「〜だから」 「〜なので」 といった意味で、理由や原因を伝えるときに使います。「becouse of」に近いニュアンスになります。

《用例》:最近雨が降らんけん、花が枯れてしまったわ。(最近雨が降らないから、花が枯れてしまったよ)


使い方2:自分の意思を伝えるとき

「〜だよ」「〜するよ」 「〜するつもりだよ」といった意味で、自分自身の意思や意向を相手に伝えるときに使います。次の項目でご紹介する【〜わ】と同様の意味になります。

《用例》:じゃあ行ってくるけん。(じゃあ行ってくるよ)



~わ / ~わね / ~だわ / ~だわね

使用頻度で言えば、【〜けん】と同じくらいかなり使います。特に【~わ】【~だわ】は、語尾につける言葉として使いまくりです。

~わ / ~だわ / ~わね

「〜だね」「〜だよ」「〜するよ」 「〜するつもりだよ」といった意味で、自分自身の意思や意向を相手に伝えるときに使います。先の項目でご紹介した【〜けん】同様の意味になります。

《用例》:今日はもう遅いけん帰るわ。(今日はもう遅いから帰ることにするよ)


また、相手に強調して(強めに)伝えたいときは【~わ】よりも【~わね】を使います。

《用例》:言われんでも早めに寝ぇわね!(言われなくても早めに寝るよ!)


(促す際の)~だわ / ~だわね

 「~しなよ」「~するといいよ」といった意味で、相手の行動を促したり、勧めるときに使います。

《用例》:体調が悪かったら、無理せず早退するだわ。(体調が悪かったら、無理せず早退するといいよ)

《用例》:冷めんうちに、先に食べるだわね。(冷めないうちに、先に食べたらどう?)



あだん

声のトーンや大きさなどの違いで意味が異なってきます。(文字だけだとイメージしづらいかもしれませんが、、)

ざっくりですが次の3つくらいに使い分けができます。

使い方1:(ちょっと強めのトーンで)「あだん!」

「も〜!」「もう、ちょっとさぁ!」「全くもう!!」といった意味になります。大阪弁の「ほんまにもう!」に近いニュアンスです。


使い方2:(トーン低めで)「あだーん・・・。」

「そうかぁ・・・」「そうなんだぁ・・・」といった意味になります。あまり状況がよくない話を聞いたときの相槌として使います。「うわぁ、、マジかぁ、、」に近いニュアンスです。


使い方3:(驚いた様子で)「あっだーん!?」

 「えっ、本当!? 」といった感じで、驚いたときのリアクションで使います。大阪弁の「えっ、ほんまに!?」に近いニュアンスです。



買わん(〇〇ん) / 〜らん / (否定表現の)せん

買わん(〇〇ん) / 〜らん

「買わない」の意味。

動詞に【〇〇ん】【〇〇らん】をつけることで、否定する言い回しになります。

また、動詞の内容によって語尾が変わることもあります。例えば「ぐ」で終わる動詞(急ぐ、防ぐ、嗅ぐなど)に対しては【〇〇がん】になります。

《用例》:行かん(行かない) / やらん(やらない)/ 要らん(要らない) / 歌わん(歌わない)/ 着らん(着ない) / 急がんでも(急がなくても)


(否定表現の)せん

否定する言い回しで多用するのが【せん】。

するか、しないかを問われたり、自らしないことを伝える際、「しない」ことを伝える簡潔な言い方として【せん】を使います。

《用例》:

Aさん:今日は家で仕事せんの?(今日は家で仕事しないの?)

Bさん:うん、せんよ(うん、しないよ)



あー  / 「る」の省略について

あー

「ある(有る)」の意味。「る」を省略した言い方になります。

《用例》:爪切りならそこの引き出しにあーよ。(爪切りならそこの引き出しにあるよ)


「る」の省略について

【あー】と同様に、出雲弁は動詞(寝る、食べる、座るなど)の「る」を省略することが多いのも特徴です。

省略するときは「る」の直前の音をそのまま伸ばします。

例えば今回の【~けん】や【~わ】と組み合わせて次のような言い回しをよくします。

《用例》:僕がすーけん(僕がするよ / 私がやーわ(私がやるよ)/ もう寝ーわ(もう寝るよ) / まだ食べーけん(まだ食べるから)/ これあげーわ(これあげるよ)



ちょんぼ(=ちょんぼし)

「少し」の意味。年配の方はもっと訛るので【ちょんぼし】が【ちょんぼす】に聞こえることもあります。

《用例》:ちょんぼだけおかわりするわ。(少しだけおかわりするよ)



ごす / ごした(=ごいた) / ごす? / ごさん?

ごす / ごした(=ごいた)

「くれる」、「貰う」の意味。【ごす】は現在形、【ごした】は過去形として使います。

また、【ごした】を【ごいた】と言うこともあり、意味は同じです。

《用例》:えっ、こんなに野菜ごすの? だんだん!(えっ、こんなに野菜くれるの? ありがとう!)

《用例》:今朝おばあさんが作ってごした味噌汁だわ。(今朝おばあさんが作ってくれた味噌汁だよ)


ごす? / ごさん?

「〇〇してくれない?」の意味。相手に頼み事をするときに使います。

《用例》:トレイ掃除しといてごす?(トイレ掃除しておいてくれない?)

《用例》:帰りにスーパーに寄って卵買ってきてごさん?(帰りにスーパーに寄って卵買ってきてくれない?)



なんぼ

「どれほど」「幾ら」の意味。数量や金額を表すときに使います。

【なんぼでも】と言うときは、「どれほどでも」「いくらでも」「好きなだけ」といった意味になります。

《用例》:なんぼでも持って帰るだわ。(好きなだけ持って帰ってね)

《用例》:このTシャツなんぼする?。(このTシャツ値段はいくらする?)



えすこに / えすこ

えすこに

「好きなように」「ご自由に」の意味。

《用例》:えすこにするだわ。(好きなようにするといいよ)


えすこ

「いい感じ」「ちょうどいい」の意味。

《用例》:

Aさん:この服どう?似合う?

Bさん:えすこだわ。(いい感じだよ)



おしまい:抑揚は標準語と変わらない(?)

初めての方はちょっと分かりにくいかもしれない出雲弁ですが、実際の会話だと状況や行動が伴うので、なんとなくは理解できるかと思います。


また、出雲弁は語尾など違うことはありますが、抑揚は標準語とほとんど変わりません。全く聞き取れないということもないので、ご安心ください◎


ただ、私が東京にいた頃、発音で唯一ツッコまれたのは「犬」について。

「この犬かわいいねぇ」と友達に言ったら、

「い(↑)ぬ(↓)」?

「い(↓)ぬ(↓)」でしょ。

とツッコまれました。そのときは無自覚だったので結構衝撃でした。。


たしか、犬の発音については関西弁も同じ発音だった気がします。ざっくり西の方言は似ていたり、重複するところも多いんですよね。

今回ご紹介した「〜けん」などは、広島弁としても使われていますし。

方言の成り立ちを調べてみるのも面白いかもしれないですね〜


今回取り上げた出雲弁はほんの一部ですが、汎用性はかなりあるかと思うので、ぜひご参考になさってください! また、こんなとき出雲弁だとどういうの?みたいなことがあれば、お問い合わせやSNSなどからリクエストくださいね◎


この記事、自分で書いていてかなり気づきがあって面白かったので、今後2回、3回と続けていこうと思いますー!では!

➡︎【追記】出雲弁講座の第2回を公開しました!記事はこちら(【例文で覚える】出雲弁講座vol.2)



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